製造工場のほとんどでは、色んな場所でモーターが使われています。
そこで、今更ですが、モーターの故障、保全に関する基本的なことを簡単にまとめます。
個人的な見解が多いです。(経験値も)
モーターについて
モーターは大きく分けて、DCモーターとACモーターがあります。
DCとは、直流でACとは、交流のモーターです。
DCモーターは古くから、回転制御しやすく、速度変更する場合は、こちらが使われてきました。身近なものでは、模型に使われるモーターがそれにあたります。
ACモーターは、DCに比べて、簡単な構造で、最近では、インバーターで使われるケースが多くなっています。
制御方式では、サーボ、インバーター、ステッピングモーター、PMモーターなどもあります。それぞれ速度、位置決め、トルク制御をするための制御方法です。
現在は性能がいいので、どれを使用してもいいですが、
位置決め制御をする場合の性能は、インバーター<ステッピング<PM<サーボの順だと思います。
ステッピングモーターの場合は、脱調することが位置決めでトラブルことがありました。
速度制御だけなら、ステッピング<PM<サーボ<インバーターの順です。
これは、性能、構成価格、メンテナンス性も考慮した個人的な見解です。
保全について
モーターを保守するのに、銘板で仕様を確認することが必要となります。
モーター容量:5.5kW ポール数:4ポール
定格電圧、周波数、電流、回転数
ここでは、200V 60HZなので定格電流は22.8A 回転数1780rpmとなります。
※回転数=周波数x60/(極数/2)なので、1800rpmですが、モーターのすべりとかあるので定格回転数は1780rpmということですね。
あとよく使うのはFRAMEです。設置するときにモーターのフレーム番号が決められているので、同じ番号を使わないと設置取り付けができません。
サーボモーターの銘板です。
ACモーターと比べて、型式ごとに違うので、型式毎に仕様を確認することが必要となります。
また、サーボモーターも場合は、減速機を使うケースが多いのも特徴です。減速機との接続(モーターシャフトの仕様)も確認が必要ですね。
保全項目
保全項目ですが、日常点検では、振動計測、温度、異音の確認が主となります。
①振動計測
振動計測計を使う。最近では、遠隔で振動計測する機器も増えています。例:横河 スシセンサー等
②温度
表面温度計、温度計測用シールでの確認、遠隔監視センサーでも温度監視機能ありますね。
③異音
聴診器、または貫通型のドライバーを耳に当てても確認できます。
保全内容ですが、
①ベアリング交換
モーターを回転するのを支えているので、ここが一番重要です。
放置するとケースとモーターの軸まで削れてしまいます。
②コイル修理
①の保全をするときには、コイルの巻替えもしました。現在は、モーターの種類にもよりますが、修理するより交換したほうが安い、高効率モーターに変更を推奨されているため交換することが多いです。
③小型のモーターの場合は、(オリエンタルとかニッセイ工業等が多いですね)モーター容量が小さく、それなりの使い方をするので、モーターの故障よりも減速機の故障が多いように思います。 ④DCモーターの場合は、回転と回転制御するのに、カーボンブラシを使っていますので、この点検メンテナンスが必要です。
⑤サーボモーターなどは、メンテ周期=更新(10年もすると現行機種がない)が多いかと思われますので、メンテ=アンプ、モーター更新になります。
故障修理の方法(チェック方法)
汎用モーターの場合
サーマル、ブレーカートリップする場合
機械的に過負荷となる。モーター(ベアリング破損)過負荷
チェック箇所
モーターの場合は、負荷側を外して簡単に回ることを確認
小さいモーターの場合、再起動して動作確認で、うーんと踏ん張って動かない現象が確認できた場合は機械的要因で過負荷です。
対応:過負荷要因の除去
三相不平衡
- チェック箇所(テスターでのチェック)
a)モーターの3線抵抗計測 3相の抵抗は同じでないと過負荷になる
b)マグネット(電磁接触器)の接点不良 単相運転で過負荷となる
c)配線の断線 ②と同じく 単相運転で過負荷となる
対応:不良個所の修理、交換
モーターの絶縁不良
チェック方法:アース側とモーターUVW相で絶縁測定を実施。
a)ベアリング破損でモーターの回転子とコイルが接触
b)コイル断線でフレームに接触
c)水等がモーター内に侵入して絶縁不良となる
対応:故障個所の修理、水等の場合は水を抜いて乾燥させる。(復活したことはないです)
- ブレーカー、サーマルの故障
単純に故障または、トリップ発生後に復旧できない場合もあります。
対応:部品交換
インバータの故障の場合
表示されるエラー番号に従い調べる
5,6年で冷却ファンが壊れることが多い。
コンデンサの故障も5,6年、10年くらいで更新を検討したほうがよい。
予備を持っていても、保管状態が悪いとコンデンサがダメになるので注意が必要です。
モーターの異常については、汎用モーターと同じ対応です
サーボの場合
表示されるエラー番号に従い調べる
ブレーキ付きの場合は、ブレーキ回路のチェックが必要です。動作していれば、カチッと動作音がします。結構、ブレーキでトラブルことは多いです。
三菱のJ2サーボは生産中止となっています。工場で使用されているのは、E9で異常停止することが多くなっています。内部電源異常なので、修理が必要です。
リニューアルキットでアンプのみ更新もできますが、一部で絶対位置検出で動作不良が出る場合もあるようです。
減速機付きモーター、冷却ファン付きの場合
- 冷却ファンが回らずに加熱して停止
- 減速機の故障、モーター軸とのすべりで故障・等
スターデルタ起動では
モーターは起動時に定格電流の3倍の電流が流れます。
小さいモーターでは、無視できますが?、5.5kW以上のモーターをインバーター等使わずに起動する場合にはスターデルタで起動する必要があります。
※スターデルタは結線の仕方です。
簡単に言うと起動時に3倍電流が流れる=電流に見合った電線、ブレーカが必要で設備費用がかかる。また、起動トルク不足となることから、最初はスター、ある程度したら、デルタに切換します。
切換には、スターデルタ切換用タイマーを使うことが多いです。
まれに設定がわるいと電流が流れすぎてトリップします。
切換をソフトスターターというので行うこともできます。(スターデルタをやってくれるインバーターみたいの装置です。)
まとめ
モーターの詳しい説明は、ほかのサイトでもたくさんありますので、経験を含めた個人的なモーター保守という観点でまとめてみました。
モーター制御異常では、生産ラインの長時間停止となるので、普段から異常がないか点検するように心がけましょう。
追記:高効率モーターへ入れ替えを進めていて気付いたこと。サーマルが前のモーターのままだとトリップする場合があるのでよく仕様書を確認することをお勧めします。
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